ブラシの選定基準

ブラシロール仕様を決定する際、「3つ」の基準を検討する必要があります。
以下の項目を検討することにより、各ラインの使用目的・環境に適したブラシロールを製作することが可能です。
毛材(ブラシ毛)の選定
ブラシロールを製作する際に基本となる部分です。
  1. ナイロン素材:
    使用目的・環境を考慮し選定する必要があります。例えば、力強いブラッシング(研削)を行いたい場合は、硬いナイロンを使用します。逆に、細かいブラッシング(洗浄)を行いたい場合は、柔らかいナイロンを使用します。また、「耐酸仕様」「耐熱仕様」など、厳しい使用環境でも耐えうるナイロンなどもあります。

  2. 砥材素材:
    砥材を入れたブラシを検討する際、被研磨体に与える影響を十分に考慮して頂き選定する必要があります。なお、洗浄を主目的としたラインでも、砥材が入ったブラシロールを使用している実績があります。

  3. 糸径:
    糸径を太くすると、力強いブラッシング(研削)に適したブラシになります。逆に、糸径を細くすると、細かいブラッシング(洗浄)に適したブラシになります。但し、砥材の大きさによっては、製作できないブラシ毛もあります。
ブラシ毛の各項目における役割
ブラシ毛の役割は、
「先端部に力を伝達する役割(A)」
「被研磨体に接触して研磨を行う役割(B)」
の2つの役割があります。この2つの役割を最適化することにより、効果的なブラッシングが達成されます。

ロール設計
使用目的を明確にし検討する必要があります。
  1. ロール外径:
    ロール外径を変化させることで、仕事量を変化させることができます。例えば、ロール外径を大きくすると、仕事量は大きくなりますし、小さくすると仕事量は弱くなります。既存ブラシスクラバーがある場合は、機器仕様・寸法の制約があるため、検討が必要になります。

  2. 毛丈(トリム):
    ブラシロールの寿命・仕事量を考慮し、選定する必要があります。

  3. 植毛方法(ディスクタイプ・スパイラルタイプ):
    植毛方法は、大きく分けてディスクタイプとスパイラルタイプの2種類があります。弊社では、長期間使用してもブラッシング品質が変わりにくいディスクタイプのみを採用しております。
「ディスクタイプ」と「スパイラルタイプ」のイメージ図

使用条件
安定したブラッシング品質と目標とするブラッシング性能に合わせて運用する必要があります。
  1. ブラシロール回転数(rpm):
    目標とする洗浄性能・研削性能を発揮できるよう設定する必要があります。基本的には、ブラシロールの回転数を速くすると、洗浄性・研削性は向上します。但し、被研磨体に接触する回数が多くなるため、ブラシロールの寿命は短くなります。

  2. 圧下量(圧し付け量):
    目標とする洗浄性能・研削性能を発揮するために検討する必要があります。同仕様のブラシロールでも、圧下量を変化させることでブラッシング性能を変化させることができます。

  3. ブラシスプレー:
    ナイロン製のブラシ毛にとって、ブラシスプレーは重要です。ブラシスプレーの主な目的は、ブラシ毛と被研磨体の接触部で発生する「摩擦熱の除去」とブラッシング後に被研磨体から発生する「汚れ(摩耗粉)の除去」です。さらに、ブラシスプレーの流量やスプレー角度の適正化もブラッシング品質を向上させる上で十分に考慮する必要があります。
■ブラシスプレーの目的
  1. ブラシロールとストリップの接触部で発生する「摩擦熱の除去」
  2. ブラッシングによりストリップから分離した「研磨塵の除去」
  3. 洗浄液(アルカリ液等)をスプレーする場合は、上記目的と「洗浄効果の増強」
■ブラシスプレー方法
ブラシスプレー方法
ブラシスプレーは、ブラシロールの回転方向に沿って行う必要があります。
これは、ブラシ毛がポンプのインペラーと同じ作用をし回転方向にスプレーを送り出す役割があるからです。従って、ブラシロールの回転方向と逆のスプレー(例1)では効果は見られません。
また、スプレーを直接ブラシに噴射する場合(例2)も、ブラシとストリップの接触面で発生する摩擦熱を冷却出来ないため効果は見られません。